スターティングオーバー

宇都宮徹壱氏の感動的なコラム。同時につい先日までの4年間の喪失を改めて感じさせられる。
特に感動したのはこの部分。

最後にもう1つ、この日の練習で「ちょっと感動した出来事」について記しておく。
それは練習後、18人の選手全員が、仮設のミックスゾーン(取材エリア)で立ち止まり、記者の質問に対して真摯(しんし)に受け答えしてくれたことである。取材する立場からすれば、これは非常にありがたく、かつ稀有(けう)なことであった。もちろん、まだ代表でのしゃべりに慣れていなかったり、うまく気持ちを言葉に表現できない選手も、いないわけではなかった。それでも私は、そんな彼らが、とりあえずは記者の前に立ち止まり、口を開いてくれたことについては、純粋にうれしく思えてならなかった。


これまで、ぶ然としたままミックスゾーンを強行突破していく選手に対して、私のみならず少なからずの同業者が、何とも苦々しい思いを抱いていた。「すみません、今日は勘弁してください」という一言でもあれば、まだこちらも納得できるのだが、それすらもない。「メディアにしゃべらないのは、格好いいこと」と勘違いしているような選手が、ごくごく少数派ながらも存在していたことは、実に残念であった。
もっとも、メディアの側に問題があったからしゃべりたくない、という選手もいて、それはそれで、こちらも謙虚に受け止めるべき事実である。ならば、われわれメディアの側も、若き日本代表たちとの健全な信頼関係を、この機会に模索すべきではないか。

宇都宮さんは「話してくれた事」に関して感動したようだが、全員が記者の質問に答えたのは偶然でもなければ、彼らのほとんどが初選出で謙虚だったからだけではないと思う。単純に彼らに「話すべき事があった」からだろう。合宿初日のたった数時間の練習によって、彼らの心や体にミックスゾーンで記者に囲まれて質問されればすぐに答えられる、誰かに伝えたい何かが植えつけられたのではないか。
あまりいい印象が感じられないジーコジャパンのメンバーの描写には同情する。彼らは4年間の練習の中で、記者に話すほどのものが得られなかったのかもしれない。それが態度に表れたかもしれない。あのチームがあらためて何も得るものの無いチームだったのだなと痛感する。
何よりもこれからの日本代表を背負う選手達に、このような実りある時間を過ごす事ができる環境が与えられたことは素晴らしいことだと思う。
さあ、今夜は反町ジャパンの初陣の日。期待するなというのが無理な話だ。この4年間の鬱憤を少しでも晴らしてくれるような試合を見せて欲しい。